主語を示す1格と、直接目的語を示す対格(4格)はすでに学んだ。ドイツ語には、別の役割を持つ3つ目の格がある。それが与格(Dativ)で、多くの場合間接目的語を示す。間接目的語とは、物を与えられたり、話しかけられたり、見せられたり、送られたりする人のことで、「その男性に本を与える」「彼女に物語を話す」のような文に出てくる。

簡単に言うとder/das → demdie → der、複数は die → den となる(複数名詞自体にも -n が付く)。与格ではすべての性が変化する。男性だけが変化した対格とは違う点だ。

間接目的語とは何か

多くの文には2つの目的語がある。動作が直接及ぶものと、そのことが誰のために、あるいは誰に対して起こるかを示すものだ。比べてみよう。

  • Ich lese das Buch.(私はその本を読んでいる。)これは直接目的語だけの文で、対格になる。
  • Ich gebe dem Mann das Buch.(私はその男性に本を与える。)ここには2つの目的語がある。das Buch は引き続き直接目的語(与えられるもの)で、dem Mann が間接目的語(誰に与えられるか)だ。

日本語ではこれを主に助詞の「に」で表す。「その男性本を与える」のように、名詞のあとに置かれる助詞が格を示す。名詞そのものに印がつくという発想は、日本語にもすでにある。ドイツ語で違うのは、印がつく場所だ。助詞のように名詞の後ろではなく、名詞の前にある冠詞の形が変わることでこれを示す。

与格ではすべての性が変化する

これが対格との最大の違いだ。与格では4つの冠詞の形すべてが変化する。男性だけではない。

1格(主語) 与格(間接目的語)
男性 der / ein dem / einem
女性 die / eine der / einer
中性 das / ein dem / einem
複数 die den(名詞に -n
  • Der Mann liest.(主語)→ Ich gebe dem Mann das Buch. 男性が変化する。
  • Die Frau lacht.Ich gebe der Frau das Buch. 女性が変化する。
  • Das Kind spielt.Ich gebe dem Kind das Buch. 中性が変化する。
  • Die Kinder spielen.Ich gebe den Kindern das Buch. 複数が変化し、名詞自体にも -n が追加される。

最後の点は見落としやすい。与格の複数形では、名詞自体にも通常 -n が付く。die Kinderden Kinderndie Freundeden Freunden。ただし die Autosden Autos のように、すでに -s で終わっている場合は変化しない。

間接目的語の見分け方

役に立つ問いは「wem?」(誰に?)だ。これに答えるものが、たいてい間接目的語になる。

  • Ich schreibe meiner Schwester einen Brief.(私は妹に手紙を書いている。)誰に書いているかと問えば、答えは meiner Schwester だ。
  • Er zeigt den Touristen die Stadt.(彼は観光客たちに街を案内している。)誰に見せているかと問えば、答えは den Touristen だ。

geben(与える)、zeigen(見せる)、schreiben(書く)、sagen(言う)、schicken(送る)、erzählen(語る)といった動詞は、与格の目的語と対格の目的語を同時にとることが多い。一方、helfen(助ける)や danken(感謝する)を含む少数の動詞は、対格をまったく取らず与格の目的語だけを必要とする。Ich helfe dem Mann であって、❌ Ich helfe den Mann ではない。こうした動詞は一つずつ個別に覚える必要がある。

語順:与格が対格より前

両方の目的語が完全な名詞である場合、与格の目的語がふつう対格の目的語より前に来る

  • Ich gebe dem Mann das Buch.(私はその男性に本を与える。)与格のあとに対格が続く。
  • Wir zeigen den Gästen das Zimmer.(私たちはお客さんたちに部屋を見せる。)与格のあとに対格が続く。

対格の目的語が代名詞(esihnsie)に置き換わると、ふつうは与格の名詞より前に出る。

  • Ich gebe es dem Mann.(私はそれをその男性に与える。)これが中立で日常的な語順だ。

Ich gebe dem Mann es も可能ではあるが、主に与格の名詞を対比・強調するための言い方で、標準の語順ではない。)

両方とも代名詞になった場合の完全な語順ルールは、あとでもっと詳しく学ぶことになる。今のところは、与格の名詞が対格の名詞より前に来ること、そして代名詞の目的語はふつう名詞の目的語より前に来ること、この2点を覚えておこう。

よくある間違い

  • Ich gebe den Mann das Buch. → ✅ Ich gebe dem Mann das Buch.(間接目的語には対格ではなく与格の冠詞が必要)
  • Ich helfe den Mann. → ✅ Ich helfe dem Mann.helfen は常に与格を取る)
  • Ich gebe den Kinder das Buch. → ✅ Ich gebe den Kindern das Buch.(複数名詞自体に付く -n を忘れないこと)

簡単なチェック

どの形が正しいだろうか。

  1. Ich gebe ____ Frau die Blumen.(die / der)
  2. Wir zeigen ____ Kind das Foto.(das / dem)
  3. Er schreibt ____ Freunden einen Brief.(die / den)
  4. Ich danke ____ Lehrer.(den / dem)danken は与格だけを取る動詞だ。
答えを見る
  1. der Frau   2. dem Kind   3. den Freunden   4. dem Lehrer

要点まとめ

  • 与格は多くの場合間接目的語を示す。物を与えられたり、話しかけられたり、見せられたり、送られたりする人のことだ。
  • 対格とは違い、与格では4つの性すべてが変化するder/das → demdie → der、複数は die → den
  • 与格の複数名詞自体にも通常 -n が付く(die Kinderden Kindern)。ただし、すでに -n-s で終わっている場合は変化しない。
  • wem?」(誰に?)という問いが、たいてい間接目的語を見つけてくれる。helfendanken など一部の動詞は、対格をまったく取らず与格の目的語だけを必要とする。
  • 両方の目的語が完全な名詞である場合、語順は与格が対格より前になる。ただし代名詞の目的語(esihnsie)はふつう与格の名詞より前に来る。