すでに与格を学び、すでに4格の目的語がある文の中で間接目的語を示す働きを見てきた。しかし与格は「2つ目の目的語」としてしか現れないわけではない。ドイツ語には、文中に4格の目的語がまったくなくても、それ自体で与格の目的語だけを取る動詞のグループがある。その動詞がたまたまその格を要求するからだ。(そのうちのひとつ glauben は部分的な例外で、後述する。)

簡単に言うとhelfen、danken、gefallen、antworten、gratulieren、gehören、glauben、passen、schmecken、fehlen、folgen、gehorchen はすべて与格の目的語を取る。意味から予測できる規則は存在しない。もっとも確実な方法は、名詞の性をその名詞ごと覚えるのと同じように、それぞれの動詞をその目的語の格ごと覚えることだ。

意味からは予測できない

日本語の助詞は、必ずしもドイツ語の格と一致しない。「答える」は「〜に」を使い、これは antworten と同じ発想だが、「手伝う」「助ける」は「〜を」を使い、helfen とは逆に直接目的語のように扱われる。「好き」の構文(映画が好きだ)は、好かれるものを目的語として扱わない点で gefallen の発想に近いが、文法的な仕組みそのものは同じではない。

  • Ich helfe ihm.(彼を手伝う。)— ❌ Ich helfe ihn.
  • Ich danke ihr.(彼女に感謝する。)— ❌ Ich danke sie.
  • Ich antworte ihnen.(彼らに答える。)— ❌ Ich antworte sie.

日本語訳から確実な規則を読み取ることはできない。以下の動詞はそれぞれ、その動詞固有の格とセットで覚えるしかない。

与格を取るよくある動詞

動詞 意味 例文
helfen 手伝う、助ける Ich helfe meiner Schwester.
danken 感謝する Wir danken dem Lehrer.
antworten 答える Sie antwortet dem Kunden.
gratulieren 祝う Ich gratuliere dir!
gehören 〜のものである Das Buch gehört meinem Bruder.
glauben (人を)信じる Ich glaube ihm nicht.
folgen 従う、ついていく Der Hund folgt seinem Besitzer.
gehorchen 従う、言うことを聞く Das Kind gehorcht den Eltern.
passen 似合う、合う Die Jacke passt dir gut.
fehlen 足りない、恋しく思われる Du fehlst mir.(あなたが恋しい。)
schmecken (人にとって)美味しい Der Kuchen schmeckt mir.
gefallen 気に入られる Der Film gefällt mir.(私はその映画が気に入っている。)

glauben は4格の目的語も取れるが、それは目的語がものの場合のみで、人の場合は違う。Ich glaube die Geschichte nicht(その話を信じない)に対して Ich glaube ihm nicht(彼を信じない)。目的語が人なら常に与格になる。antworten は同じようには働かない。ものについて言うときは auf + 4格を使う(Ich antworte auf die Frage)か、独立した動詞 beantworten を使う(Ich beantworte die Frageauf なし)。antworten 自体に単純な4格の目的語が直接つくことは決してない。

gefallen と fehlen は文の構造を逆転させる

gefallenfehlen は特別に扱う価値がある。単に違う格を取るだけでなく、文全体の組み立てが逆になっているからだ。

日本語の「私はその映画が好きだ」では、好む側の人が主題(「は」)になっている。ドイツ語の Der Film gefällt mir は、文字どおりには「その映画が私を喜ばせる」という意味で、好かれるもの主語になり、それを好む人が与格の目的語になる:

  • Der Film gefällt mir.(私はその映画が気に入っている。)
  • Die Schuhe gefallen ihm.(彼はその靴が気に入っている。主語 die Schuhe が複数形なので、動詞も複数形の gefallen になる。単数形の gefällt ではない。)

fehlen も同じ発想で働く。Du fehlst mir は文字どおりには「あなたは私にとって欠けている」という意味で、これがドイツ語で「あなたが恋しい」を表す言い方だ。何かが足りないと感じる人は主語ではなく与格になる。

よくある間違い

  • Ich helfe sie. → ✅ Ich helfe ihr.helfen は4格ではなく与格を取る)
  • Er dankt sie für das Geschenk. → ✅ Er dankt ihr für das Geschenk.danken も同じ規則)
  • Ich gratuliere dich. → ✅ Ich gratuliere dir.gratulieren は与格専用)
  • Mir gefällt der Film nicht mag. → ✅ Der Film gefällt mir nicht.gefallenmögen を混ぜないこと。どちらか一つの構文を使い、主語と目的語の役割を取り違えないように)
  • Du fehlst dich. → ✅ Du fehlst mir.(何かが足りないと感じる人は与格になる。4格ではない)

簡単なチェック

正しい与格の形を入れよう。

  1. Ich helfe ____(er、「彼に」)。
  2. Wir danken ____(die Lehrerin、「その女性教師に」)。
  3. Das Auto gehört ____(mein Vater、「私の父に」)。
  4. ____ gefällt das Buch.(ich、「私に」)
答えを見る
  1. Ich helfe ihm.
  2. Wir danken der Lehrerin.
  3. Das Auto gehört meinem Vater.
  4. Mir gefällt das Buch.

要点まとめ

  • helfen、danken、gefallen、antworten、gratulieren、gehören、folgen、gehorchen、passen、fehlen、schmecken など、固定された一群のドイツ語動詞は、日本語訳では直接目的語のように見えても、与格の目的語だけを取る。
  • 意味から導き出せる規則はない。それぞれの動詞をその格ごと覚えること。
  • glauben だけが例外で、ものには4格、人には与格を取る(Ich glaube ihm に対して Ich glaube die Geschichte)。antworten は人には与格のままで、ものには auf + 4格、または独立した動詞 beantworten が必要になる。
  • gefallenfehlen は文の役割を入れ替える。好かれるもの・足りないものが主語になり、人は与格の目的語になる。Der Film gefällt mir であって、Ich gefalle den Film ではない。